From Bits to Qbits: how Bavarian companies are embracing Quantum Science and Technology

バイエルン州は、世界最先端の量子科学技術の中心地になるために全力を傾けています。また、バイエルン州に本拠を置く企業は関連研究機関と連携し、将来有望な量子科学技術の活用に向けて、すでに協力を始めています。

ここでは、現在進行している主なプロジェクトや企業の取り組みをご紹介いたします。

中小企業におけるQSTの普及

バイエルン州に所在する大企業の多くは、独自の量子科学技術研究部門がありますが、当地の経済的基盤を支える中小企業にとって、その様な部署の特設はほとんど不可能に近い代物です。そんな格差を少しでも埋め、当技術を中小企業においても利用できるようにするために、バイエルン州ではいくつかのイニシアチブをご提供しています。
例えば、PlanQK (Platform and Ecosystem for Quantum-Assisted Artificial Intelligence)プロジェクトでは、ミュンヘンを本拠とする量子応用研究所(QAR-Lab)が19のパートナーと協力し、自社にQST研究部署を持たないドイツ中小企業向け応用の開発に取り組んでいます。このプロジェクトの目的は、これらの企業が量子技術をビジネス初頭から利用できるようにすることです。そのためのPlanQKプロジェクトでは、提供可能な技術やスペシャリストの情報が用意され、利用者が容易にアクセスできるナレッジプラットフォームを設けてそのニーズをサポートしています。
その他、量子テクノロジーの応用には、金融市場での不正およびアノマリー検知や予測、さらには産業および公共交通機関におけるメンテナンスプロセスの最適化が例として挙げられます。工業生産ラインの微調整や、工業用コンポーネントのネットワーク化、またその制御システムもそのひとつです。

QSTを幅広い多くの分野へ普及させるためには、高い信頼性があり、よりシンプルな利用を可能とするベースの構築が必須となります。そして、これこそがバイエルン州量子セキュリティ・データサイエンス能力センター(BayQS)が目標するところです。BayQSでは量子コンピューティングの関連ソフトウェアの問題を研究し、以下の分野でソリューションを開発しています。

•    産業界における量子技術の利点を的確に割り出し、現状の問題をサポート

•    現在、応用可能な量子ハードウェアのインターフェース研究と、その結果を活かした知的財産リスクの最小化

•    量子アルゴリズムの開発の簡略化

サイバーセキュリティ分野の画期的アプリケーション 

QSTで、今日のデジタル社会の機密情報保護で一般使用されている暗号化システムの多くが解読される可能性は否定できません。反面、この技術は従来型のコンピュータ同様、量子コンピュータのどちらからの攻撃にも対抗する安全な暗号化システムの開発に応用できます。これにより、より安全な暗号システムが期待できることで、サイバーセキュリティはQSTの主要応用分野となり、バイエルン州ではそれを多くの研究開発プロジェクトで反映しています。

たとえばMuQuaNet（ミュンヘン量子ネットワーク）プロジェクトでは、ミュンヘンにあるドイツ連邦軍大学が、当地の IT セキュリティエキスパート企業Rohde & Schwarz Cybersecurityなどと協力しています。その目的は、研究・評価のための安全な量子暗号通信ネットワークの開発、構築、またその運用です。そして、このノウハウは他の研究機関や官庁への導入も予定されています。

Rohde & Schwarz Cybersecurity社が開発したキーマネジメントシステムは、すでにそのテストに成功しており、MuQuNeの重要なマイルストーンの一つである、高度な安全性のある耐量子ネットワークでそれを達成しています。

世界中のスペシャリスト達が、量子コンピューティングに対応する安全な暗号技術をさまざまな角度から研究しています。Aquoryptは、Giesecke+Devrient社、Infineon社、Siemens社、フラウンホーファー応用統合セキュリティ研究所、ミュンヘン工科大学、ダルムシュタット工科大学が参加するバイエルン州の共同プロジェクトのひとつです。同プロジェクトは、工業のエンベデッドシステムやスマートカードを使用したアプリケーションセキュリティにおける量子暗号化技術の適応性、および実用性調査のために発足されたものです。

ミュンヘンに本社を構えるGiesecke+Devrient社は、同プロジェクトにマイクロエンベデッドシステムの専門知識を寄与するセキュリティ技術のグローバルプロバイダーです。ここでの最大の課題は、新しい暗号プロセスを現行の集積回路サイズに搭載することにあります。その専門筋によると、この試みは「象を切手に載せる」努力に匹敵するとされています。

この分野にご興味を持たれたすべての方々のために、Bay QS - フラウンホーファー AISEC ではCybersecurity Training Labを開設しました。量子コンピューティングについて学びたいビギナーの方から量子科学の専門家まで、どなたでも歓迎です。管理職の方々には意識向上トレーニングを、量子コンピューティング初心者の方にはベーシックな入門セミナー、さらには、よりテーマを掘り下げた専科セミナーも提供しています。その他、個々のチャレンジや特定のアルゴリズムについても社内のワークショップを設け、より詳しく取り組むことができます。

量子技術で金融サービスの先制スタートを 

気候変動、サプライチェーンの脆弱性、パンデミックなど。それらが混在するリスク要因の複雑性は一般論としての説明は出来ても、それを数値化することは困難です。保険会社はリスクをヘッジし個々への影響を最小限にするために、この複雑なリスク要因を予測し、把握する必要があります。

そこでMunichRe再保険のチームは2020年から、損失と損害確率の複雑な計算をいかに量子コンピュータで応用できるか研究してきました。量子コンピュータは、履歴データだけではなく将来のシナリオをシミュレートすることで、潜在的損失を算出することが可能です。異なるシナリオを順次に1件ずつしか計算できない従来型のコンピュータに比べ、量子コンピュータは数多の可能性を持つシナリオを同時に予測することができることから、ソリューションに必要な計算時間を大幅に短縮できるわけです。

このように量子科学技術により、保険会社はリスクをより適切に把握できるようになり、これまで保障対象にならなかったケースも新しい商品としての提供が可能になることでしょう。

MunichReはドイツの大手企業13社が参加する QUTAC アプリケーショングループの1社であり、バイエルン州に本社を構える4社のうちのひとつです。QUTACは、ドイツの金字塔であるQCエコシステムの開発、および QCアプリケーションの共同識別と開発、テスト、またその共用をミッションとしています。

パワーアップする半導体

QUTACプロジェクトのひとつに、ミュンヘンあるInfineon社のものがあります。半導体メーカーであるInfineonにとって、世界でも信頼性の高いサプライチェーンの確保は不可欠です。そこでは需要と供給の調整が非常に複雑で、従来のコンピュータ技術では根本からそれを最適化することがとても困難でした。しかし、Infineonではそれら無数の入り組んだ問題を、量子コンピューティングで少なくともその一部を解決できるとしています。

このような革新的なアプローチによるリスク算出は、新しいテクノロジーに対して特に有望視されている点です。サイバー攻撃やIoTサービス、および人工知能などが保障されれば企業は先端技術を早期に導入するようになり、それに伴う潜在的リスクが軽減され、さらには回避できるようになることでしょう。

量子技術がもたらす医療の飛躍的向上

バイエルン州は診断や治療のための先端医療技術の開発、および身体的障害を補うためのバイオメディカル技術に多額の投資を行っています。

その代表例に、TUMミュンヘン工科大学付属ミュンヘン・バイオメディカルエンジニアリング研究所(MIBE)があります。この研究所は、生物医学エンジニアリングの研究者間の交流や、その育成を促進しています。MIBEでは医学や自然科学、工学などのさまざまな専門分野の研究成果やアプローチが連動しつつあります。

がん医療における画像診断の量子技術の活用は、現在進行中の共同研究プロジェクトのひとつです。これまで、核磁気共鳴画像法(MRI)で腫瘍細胞の代謝をトレースすることは臨床では不可能でした。しかし、学際的な研究チームがまさにこれを可能にする、量子暗号を応用した過分極装置の開発を進めています。そして、これが臨床でも応用されることになるでしょう。その目標は、代謝プロセスのMRI画像処理を大幅に改善し、腫瘍をより早期に、より正確に評価し、腫瘍治療法の選択とモニタリングを向上させることにあります。

MIBEのチームは他のドイツの大学だけはなく、Siemens 社や核磁気共鳴研究機関にコイルを供給する高評価のサプライヤーの1社であるRapid Biomedical社（本社　ニーダーフランケン地方）などの産業界のパートナーとも連携しています。

これらは、バイエルン州で QSTがいかに新たな成長のチャンスを提供しているかのほんの一例にすぎません。

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ご興味があれば、御社の業界関係者をご紹介し、概要をご説明させていただきます。どうぞ、担当者までご連絡ください。