アディダスはいかにして蜘蛛の糸から革新的な靴を生み出したか

スパイダーマンが靴の開発に関わったのか?これは全くファンタジーのようだが、実は現実に起きていることだ。自身もスパイダーマンと呼ばれるDr.トーマス・シャイベルは、バイロイト大学の彼のチームで蜘蛛の糸を人工的に作り出すことに成功した。そして、この「バイオスチール繊維」を使って、アディダスが革新的な靴を生み出した。研究者と企業がこの地域で重要な研究分野で手本を示した。

バイロイト大学は建学以来、オーバーフランケン地方のイノベーション・エンジンだ。今年の「DLDキャンパス」の最初の開催地となった十分な理由がここにある。「DLDキャンパス」は大都市圏から離れ、特色ある地方と大学に焦点を当てることを目的とした会議であり、世界中のオピニオンリーダーとイノベーターのためのプラットフォームを提供するデジタル・ライフ・デザイン(DLD)の活動のひとつだ。550人以上の参加者の中にアディダスのSam Hardy副社長とDr.トーマス・シャイベルバイロイト大学教授もいた。テーマは、バイオ繊維と蜘蛛の糸を模倣したバイオスチール繊維を使ったパフォーマンスシューズの開発である。

Session zum Thema Biofabrication auf der DLDCampus in Bayreuth

バイオスチール繊維の驚異的な強度


この製品が市場に出るまでに、実に11年かかっている。ミュンヘン近郊プラネッグに拠点を置くAMSilk社が作った糸はヨーロッパに生息する蜘蛛の糸のたんぱく質にヒントを得ている。天然由来で、かつ完全に分解できる高性能な繊維の開発はまだ市場で進んでおらず、魅力的な目標だった。Dr.シャイベルのチームはバイオスチール繊維の開発に取り組む。蜘蛛の糸は驚異的な特性を持っている。リサイクル可能で、かつ環境を汚染しない。更にゴムのような伸縮性があり、金属のように強靭だ。自然界にある繊維の中で最も耐久性があるのが蜘蛛の糸だ。その強度は金属やケブラー繊維にも匹敵する。



アディダスと共にスパイダーマンを目指す


とりわけ、こういった新たな素材の登場を待ち望んでいるのはスポーツ選手かもしれない。他の製品はもとより、アディダスのスポーツシューズにその利用価値が見出された。既に2016年11月、アディダスはニューヨークで開催されたバイオ繊維会議で、天然繊維を模した世界初のバイオスチール繊維を使ったパフォーマンスシューズを発表している。この素材でアディダスは、天然の繊維を模した最初の靴メーカーとして持続可能性と機能性における全く新しい標準を繊維業界に構築した。この素材はこれまでの合成繊維よりも15%も軽い。そのため、特にジョギングシューズに適している。参加者はDLDキャンパスで、3Dプリンターで作られたマラソンシューズのサンプルを間近に見ることができた。


産業と直結した大学の研究

有名教授がいる新素材の研究はバイロイト大学では人気だ。プラスチックから金属、マルチマテリアルの研究と開発を専門とする200人以上もの研究者がいる。
製品化のための公共研究機関としてNMB(Neue Materialien Bayreuth)がある。特にプロセステクノロジーと重合体軽量建造資材の開発に力を入れる。NMBにはインキュベーションが併設されており、この分野で活躍するスタートアップを支援している。既に国際的な知名度のある企業も、ここで革新的な分野における新たな支店の開設や、設備投資に対する支援を受けることができる。NMBの支援は非常に実際的なものだ。これにより、大学の基礎研究から応用、産業への技術移転は確実なものとなる。このような緊密な連携が素材研究の集積地としての地位を確かなものにしている。さて、次はどのようなヒーローがここから誕生するのだろう。