バイエルン州ヘルツォーゲンアウラッハでアディダスが70周年

1949年8月18日、アドルフ(通称アディ)・ダスラーは会社を正式に商業登記しました。それは弟のルドルフ・ダスラ―がプーマを創設したちょうど1年後のことでした。厳密にいうと、このバイエルンの世界的スポーツウェア・メーカー「アディダス」の創業祭には数日早かったわけですが、2019年8月9日の祝賀会の当日、それを少し早く祝うかそうでないかは大した問題ではありませんでした。ヘルツォーゲンアウラッハのアディダス本社にはスポーツ界や産業界から大勢の人が訪れ、今や5000名以上に増えた従業員と創業70周年を祝いました。

ヘルツォーゲンアウラッハの町の入口にある、それこそ小さな町かと思うほどのアディダス本社とキャンパスを見れば、スポーツがアディダスにとって重要であることは明らかです。そこには、同社が従業員の為に建設したテニスコート、ボルダリング・ウォール、さらにはサッカースタジアムまであります。DAX上場企業のアディダスは、このキャンパスのために数十億規模の投資をしており、新しいメインビルディングだけで3億5千万ユーロをかけています。アディダスは世界的な大企業となった現在まで、創業地ヘルツォーゲンアウラッハに深く根ざしてきました。


70年の間、アディダスはこの町を拠点とし、そうこうするうちに世界中に5万7千人の従業員を擁し、年間9億超の商品を販売する大企業になりました。企業価値は500億ユーロ以上とみなされています。


3本線のロゴマークで知られるアディダスの周年創業祭では、このFCバイエルンのスポンサーでもある企業は当然通常より奮発します。波のプールでサーフィンをしたり、プロバスケットボール選手とシュートを楽しんだり、フィリップ・ラームと話すことも出来ます。こういったアトラクションが苦手な人には、アディダスのアウトレットパークを見渡せる観覧車にこもることもできます。観覧車からは、そのおまけとして競合会社プーマを見下ろすことができます。なぜならプーマの本社は70年前と変わらず、アディダスの本社からわずか数百メートルのところにあるからです。


アドルフ対ルドルフ:経済史に残る兄弟喧嘩


ダスラー家は他の数少ない貢献者同様、ドイツのスポーツ業界を形作りました。兄弟は靴職人の家に生まれ、第一次世界大戦を生き残った二人は共にスニーカーを作り始めます。親交のある工房でその靴に金属スタッドが取り付けられました。ルドルフ(ルディ)が第二次世界大戦から帰還した後、兄弟は衝突し、ルディは「プーマ」そしてアディは「アディダス」へと、互いに違う道を歩み始めました。噂では、兄弟はその後一言も言葉を交わさなかったと言われていますが、両社とも今日までバイエルン州ヘルツォーゲンアウラッハに本社を置き、事業を続けています。プーマとアディダスはいずれも本社から徒歩圏内にアウトレットショップと旗艦店を構えています。そういうわけで、バイエルンでは例えば FitTechと言われるような新しい技術を使ったスポーツシューズやスポーツウェアも、間近にそれを見ることができます。 


骨肉の争いと和解


アディダスとプーマは創業以来、10年ほど前までは互いに敵対的な競争を繰り広げてきました。ところが、2009年に突然正式な和解に至りました。それは“Peace One Day”というイニシアティブの一環で、アディダスとプーマそれぞれの代表者が初めて握手を交わしました。このようにして、世界2位と3位のスポーツ用品メーカーが、スポーツ業界の中核を担うバイエルン州ヘルツォーゲンアウラッハの、それも数百メートルの中で平和的に共存しているのです。


変化し続けるスポーツ業界と革新


ドイツのナショナル・チームが、サッカワールドカップで初の優勝を飾った時に履いていたのがアディ・ダスラ―が開発したスパイク付シューズでした。今日でもバイエルン州では絶え間なく新たな発明が生まれていますが、中でもアディダス社内では発明の精神が受け継がれています。以前このビジネスニュースでも同社とバイロイト大学が共同開発した蜘蛛の糸からヒントを得たシューズについてお伝えしたことがありますが、スパイクを付けるなどの単純な変更では、イノベーションを推進する今日のヘルツォーゲンアウラッハの企業はもはや満足しません。製品の根本的な新規性だけではなく、生産方法についてもその考えは及んでいます。3Dプリンターや人工知能といった最新技術のおかげで益々生産性は向上しています。インダストリー4.0という国家戦略のひとつとして、反復作業や予見というタスクについては人工知能がその作業を大きく改善するという可能性があります。これは精密なデータや計測値が重要となる工業生産現場でも同様です。アディダスはこのような技術を自動化やロボットなどの更なる革新的ドライバーと組み合わせて、地元フランケン地方と米国アトランタの自社工場「スピードファクトリー」で既に活用しています。「スピード」は、もちろん自動化された製造工程そのものを表していますが、更に顧客のニーズやトレンドにいち早く対応する「スピード」をも意味しています。アディダスが活用するハイテクは、その生産工程だけではありません。注文数量の予測にも人工知能を活用しています。ローカルからグローバルの競争までを戦い抜くための、持続可能なアドバンテージをヘルツォーゲンアウラッハではこうやって勝ち取っているのです。