Digital Economy 2016年8月12日

増加するバイエルン州のアクセラレーター

バイエルン州のアクセラレーターはスタートアップ企業にとって有用な経験、示唆に富む助言、広範なネットワークを提供する価値の源泉である。

そのミュンヘンに新たなアクセラレーターが加わった。国連の世界食糧計画(WFP)が7月にWFPイノベーション・アクセラレーター  WFP Innovation Acceleratorを発足させたのだ。

 

イノベーション・アクセラレーターがミュンヘンに

 

製品・サービスのアイデアを生み出す、そしてそれらが市場に叶うものになるよう改良していく-スタートアップ企業のための用意された「加速器」にかかれば、デジタル系ベンチャーは心配する必要がない。それと同じように、デジタル産業の起業家ら自身も、人道的な立場からWFPイノベーション・アクセラレーターを支援したいと考えている。目指すのは、WFPが提唱する「飢餓のない世界の実現」を加速させる解決策である。そのためにWFPのスタッフを専門家、企業、市民団体と引き合わせて、専門的な知見、資金、分野横断的な協力で突破口を切り開くアイデアを提供しようとしている。解決の糸口は日々の仕事の中で生まれ、それを醸成してプロトタイプを作り、試してみる。支援チームはWFPあるいは外部からのアイデア提供者に提出するため、3~6か月の間選ばれたプロジェクトに従事する。WFPの世界的な支援プログラムでは現在既に12のプロジェクトが進行する。

WFPイノベーション・アクセラレーターがミュンヘンを拠点にしたのは、よく考えたうえでの決定だ。スタートアップが開花し、発展を続けている現 場であれば、新しいアクセラレーターとして、またアクセラレーターが援助するアイデアそのものについても、十分に恩恵を受けられると判断したからだ。ス タートアップが活躍し、大学、研究機関、大企業の革新的な連携が存在している場所にWFPは豊饒な大地を見出したわけだ。ミュンヘン空港など、国際的なア クセスも良好という卓越したインフラも重要な要件だ。
 

最高のコミュニティ

WFPがアクセラレーターとしてミュンヘンに拠点を持つ、これは最高の環境に身を置いているということだ。革新的なアイデアやスタートアップを、豊かな知識と資源を背景に支援し、早ければ数か月で製品やサービスが市場に提供されるような場所とあれば、それは最高の立地だ。ベンチャー企業だけでなく企業や公的機関もアクセラレーター・プログラムを世に出している。例えばBerk1.Bayernでは先ごろインシュアテック・アクセラレーター・プログラム(InsurTech Accelerator Programm)の参加チーム募集をした。もちろん民間企業も既に以前からアクセラレーター・プログラムを評価している。その例を挙げてみよう。
 

ProSiebenSat.1 Media AG Accelerator: 複数の放送局を運営するProSiebenSat.1メディア株式会社(本社ウンターフェリング)のアクセラレーター。メディア産業のスタートアップに限らずB2Cのアイデアを広く募っている。

Wayra von Telefónica Deutschland: Wayra von Telefonicaは国際的に展開する技術系スタートアップのアクセラレーター。8月末までデジタルイノベーションデイアワードの参加者を募集しており、9月半ばにファイナリストとして3チームを選んだ後、9月末に1位から3位を決定する。ファイナリストに選ばれると賞金やイベントへの参加権が得られる他、アクセラレーター・プログラムによる最短の支援が受けられる。

Media-Saturn Tech Accelerator: 欧州最大の家電量販チェーン店「メディア・マルクト」を経営し、かつライバル関係にある家電量販店「サターン」の株をも保有するメディア・サターン・ホールディング(本社インゴルシュタット)が主催するアクセラレーター・プログラム。同社が重点的に取り組んでいるコンシューマーエレクトロニクス分野のスタートアップに支援する。

Starburst Accelerator: 航空産業界で唯一のアクセラレーターで、パリ、ロスアンジェルス、ミュンヘン、シンガポールに拠点を置くエアバスやKLMなどの世界的企業が革新的なアイデアを支援している。
 

以上のような大企業だけでなく学術界でもアクセラレーター・プログラムによる支援が盛んになっている。
 

Strascheg Center for Entrepreneurship (SCE): ミュンヘン単科大学がイニシアティブをとって大学発のベンチャーを支援。

Bavaria Israel Partnership Accelerator (BIPA): 上述のSCEが運営するプログラムの一つで、イスラエルあるいはバイエルンから生まれたデジタルベンチャーに対して、多文化の混合チームでアイデアの改良・開発を支援する。

TechFounders: ミュンヘン工科大学が設立した有限会社UnternehmerTUMがスタートアップを投資家やパートナー企業とつなぐアクセラレーター・プログラムTech Founderを運営している。パートナー企業にはBMW、シーメンス、ミュンヘン再保険などが名を連ねている。

WFPアクセラレーターはスタートアップが活躍する場所に名を連ね、その土壌を豊かにしている。ミュンヘンは国際的なベンチャーが活躍する場として、改めてその強みを示していると言えよう。