研究&開発 Jul 16, 2015

ソーラー飛行機 アルプスを越える

トラウンシュタイン(Traunstein)近郊ウンターヴェッセン(Unterwössen)を2015年6月25日に出発したバイエルン州ネッセルヴァング(Nesselwang)にあるPC-Aero社のソーラー飛行機「エレクトラ・ワン・ソーラー(Ekektra one Solar)」は、アルプスのグロスグロックナー山(Großglockner)を越えて合計200kmを飛び、東チロルの町リエンツ(Lienz)に到着した。飛行時間は2時間半であった。アルプス上空横断飛行に成功したエレクトラ・ワン・ソーラー機はその後、7月2日に悪天候の中を高度3000mで復路を飛行した。同機は、向かい風と強い突風の中を190km飛行し、約2時間後に予定どおりツェル・アム・ゼー(Zell am See)の飛行場に着陸した。

両翼上の280個の太陽電池セルと、胴体に搭載された11.5kWhの蓄電池により、排ガスを全く出さない低騒音超軽量飛行機が実現した。この太陽電池がフライト中に飛行に必要なエネルギーの約30%をリアルタイムでまかなう。使用されている太陽電池セルはSolarWorld社の太陽電池モジュールに組み込まれているものと同じだ。この蓄電池容量でのエレクトラ・ワン・ソーラーの航続距離は500kmとなっている。

 

テスト飛行時、機上には高解像度の3D画像撮影用の特殊カメラが搭載された。このシステムはパートナーであるElektra UAS社によって開発され、同機に取り付けられた。「クリーンな移動のために新たに飛行機を開発する必要はない。既にある様々な技術を最も的確な組合せで、ひとつに統合すればよいのだ」と、PC-Aero社とElektra UAS社の社長であるカリン・ゴロガン(Calin Gologan)氏は語る。軽量構造、高効率モーターとコントローラー、最新のリチウムイオン電池、ソーラーシステム、3Dカメラおよび自動化飛行技術など、これだけ多くの最先端テクノロジー、未来の技術が一つのプロジェクトに投入されることはめったにない。

 

PC-Aero社の中核事業は、飛行機および電動・ソーラー飛行機の開発、プロトタイプの製作と認可取得である。これまでに5機のエレクトラ・ワン・ソーラーを製造した。2015年末までにはドイツの超軽量機の認可が下りると予測されている。複座式のエレクトラ・ツー・トレイナー(Elektra Two Trainer)の開発は既に完了し、2015年にはプロトタイプの製作が始まる。このモデルは既に米国企業とのライセンス契約が締結されている。現在は複座式のエレクトラ・ツー・レコード(Elektra Two Record)の開発を行っている。これは翼長25m、成層圏飛行および長距離飛行を目的に設計されている。こちらも既にスイスのSolarXplorer社から高度24kmの新記録飛行用に1機が発注されている。