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Japan Nov 14, 2016

ジャーナリスト熊谷徹氏による在バイエルン州日系企業ビジネス・セミナー「ドイツと日本のワークライフバランス」。

バイエルン州に無事に落ち着いた日系企業とは、緊密な連絡が保たれている。結局のところ「アフターサービス」は重要である。さまざまな問題が生じたとき、それらの企業からまず電話を受けるのは私たちだ。たとえば、日系企業がバイエルン州の企業とのネットワークづくりを強化したい場合は、仲介役となって州内のパートナー企業を紹介する。あるいは、数年が経って拠点の拡張が必要となり、新しい場所を探す手助けが必要な場合も相談に乗る。もちろんサービスは無料。

ときには、ドイツと日本の企業で習慣が大きく異なるため、日本企業が理解に苦しむことがある。なぜドイツでは金曜日の午後2時以降になるとオフィスにほとんど誰もいないのか、なぜドイツ人の従業員は年間30日も有給休暇があるのか、とよく尋ねられる。なぜ、ここではワークライフバランスがドイツでは大きな問題なのか、そしてなぜそれにもかかわらず、ドイツがこれほどの経済大国なのか?

 

率直に言うなら「ドイツ人はなぜ、一年に150日休んでも仕事が回るのか?」

この質問に答えるため、日本人ジャーナリスト熊谷徹氏によるビジネス・セミナーが、在ミュンヘン日本国総領事館、ミュンヘン市拠点マーケティング、ミュンヘン日本人会法人会(美都会)の協力を得て、バイエルン州経済省で開催された。熊谷氏は、1959年に東京に生まれ、NHK(日本放送協会)の国際部に勤務した後、1990年からドイツ在住。フリーランス・ジャーナリストとして活躍し、ドイツの現状について多数の著書がある。

 

日系企業の代表を迎えた会場は、バイエルン州経済省のルートヴィヒ・エアハルト・フェストザール。100人近いセミナー参加者が、ドイツの労働倫理に関する熊谷氏のわかりやすい解説に聞き入った。

 

1時間のプレゼンテーションが終わると、日本より労働時間が短いのに高い生産性を達成しているドイツの「驚異」が、少し理解できた気がした。 
熊谷氏によれば、ドイツと日本の最大の違いは、ドイツの労働者が法的拘束力のある雇用契約を結んでいることである。この契約は、従業員と雇用主が守るべき権利と義務を明確に規定している。たとえば、ドイツの労働時間法(ArbZG)第3項によれば、従業員の勤務日あたりの労働時間は8時間を超えてはならない。10時間まで延長することは可能だが、6カ月または24週間の1日あたりの平均労働時間が8時間を超えないことが条件である。日曜日および国民の休日の労働は、ArbZGの第9項で全般的に禁じられている。ArbZG違反は、15,000ユーロまでの罰金となる場合があり、上司は個人の資金で支払わねばならない。 
一方、日本には、明確な規定を持つ雇用契約がない。ドイツでは、従業員の利益を代弁する労使協議会が重要な役割を担う。これは日本ではほとんど機能していない。

 

しかし、日本の労働者に不利なのは法的な規定がないことだけではない。日本社会の文化的背景も、従業員の労働条件の改善を大きく妨げている。

 

例を挙げてみよう。日本では、常に適切な担当者が顧客に対応することが非常に重要とされる。担当者が休暇中、あるいは顧客の問題に対応できないと聞けば、顧客が激怒することも覚悟せねばならない。企業は、最悪の場合、注文を取り消される可能性がある。

 

しかしドイツでは、仕事は特定の人ではなく、企業のものである。代理のルール、理想的にはデータベースシステムがあり、休暇や病気で休んでいる同僚の代わりを務める従業員をサポートする。それに加えて、日本とは違い、担当者が休暇中で対応できないことに顧客が理解を示す。結局、自分ももうすぐ年次休暇を取る、あるいは海外旅行を楽しんできたばかりなのだ。このため、顧客は気長に担当者の帰りを待つか、代理の担当者でもまったく不満を感じない。

 

専門スタッフは不足状態にあるため、企業が優秀な労働者を確保する競争に勝つには、戦略を見直さざるをえない。ドイツの雇用主はワークライフバランスをますます重視する傾向にある。でなければ、優秀な担当者を確保することは難しい。企業は、従業員に対する悪い待遇が公表され、マスコミに叩かれることにも敏感である。

 

結論:熊谷氏の意見では、日本の社会にはドイツほど休暇を尊重するというコンセンサスがない。しかし、日本企業のうち1社が従業員の労働条件を改善し、従業員が生活を楽しめるようにしても流れは変わらないだろう。もともと日本は「おもてなし」文化の国。つまり、常にお客様第一なのだ。この文化を残したまま「ドイツの労働モデル」を日本に導入できるかについては、議論が分かれるかもしれない。今回のイベントの目的は、バイエルン州の日系企業にドイツのビジネス習慣を知ってもらうことだった。すなわち、なぜドイツ人がそれほど余暇を持っているのに生産性が高いかということである。

 

セミナー終了後、参加者は講演者と活発な議論を交わし、バイエルン州と日本の料理が並んだ立食パーティーを楽しんだ。

 

もちろんドイツにも例外や厄介者はいるが、全体として、私の同僚たちは仕事だけでなく、生活や自由時間も大いに楽しんでいるという印象がある。

 

 

 

 

 

 


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